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■泡人形ズコバ子
 チャイムの音に目が覚めて、ズボンをはいてあわてて玄関のドアを開くと、大きなスーツケースを手にした男が突っ立っていた。
「わたくしズコバコを商っている者ですが」
 そう言って男は名刺を差し出した。どぎついピンク色の紙には『(有)プリベントチャイルド ホリ・ケイイチ』とドドメ色で抜かれていた。裏には電話番号、そして時間ごとの料金表。30分3000円、一時間で5000円、延長10分ごとに1000円、指名料は2000円。
「それじゃあひとつ貰おうかな」
 ぼくは何気なしにそう言った。丁度、むらむらとズコバコづいていたところだ。
「毎度ありがとうございます」
 男は玄関先でスーツケーツを開いた。中には筒状のプラスチックケースがみっしりと詰まっている。ポンポンと威勢の良い音を立てて蓋を開け、それぞれ長さの違う金属片を取り出し、迷いのない鮮やかな手つきで大小の部品を組み立てる。次にスプレー缶をとりだし、組み立てた金属の表面にシェービングクリームのような黄みがかった泡を塗りたくる。
 泡は塗った先から硬化し、人肌のような色と質感になった。驚いたことに、おおよそ人体の骨格とは似ても似つかない金属の部品を芯に、紛うことのない少女の形が浮かび上がる。泡自体が一種の形状記憶をもっているかのようだ。そのほんのりと濡れたような肌は、あまりにも肌理が細かいためにかえって作り物めいて見えた。最後にカツラを被せ、体毛を貼り付けると、そこには一人の完全な少女の姿があった。ものの五分とかからなかった。まるで全く魔法みたいだ。
「ズコバコに最低限必要な機能しかありませんので、持ち運びはお手ずからお願いします」
 男はそう言って、少女をぼくの腕の中に預けた。お姫様抱っこで持ち上げると、ちゃちな金属と泡の塊とは思えないほど量感があった。
「それでは、一時間後に」
 玄関のドアはバタンと閉められた。

 ベッドに少女を放る。スプリングが軋んで、少女の裸体が一瞬波打つ。触れた感じはつきたての餅みたいだ。ほんのりと暖かく、手のひらにペタペタと貼りつく。摘んでひっぱると、どこまででも伸びる。調子にのってひっぱっていると、プチンと切れてしまった。ちぎれた肉片は指の間でグズグズになり、ぬるぬるとした液体が染み出す。少女自身には生々しい傷口はなく、皮下には表皮と同じ肌色の素材が続いているばかりだ。透明な体液がちぎれた箇所からじくじくと染み出していたが、すぐに乾いた。
 ズコバコに及ぼうと、服を脱ぐ。ジッパーに手をかけたところで、少女の眼がパチリと開いた。黒目がキョロキョロと動き、辺りをうかがう。ただし、首を回すことはおろか、麻酔をかけられてでもいるいるように身じろぎもできないようだ。目ばかりが忙しくまわっている。
「あなたはだあれ? どうしてわたしはこんなところにいるの?」
 これも男が言うところの、ズコバコに最低限の機能なのだろうか。ただの無機質な人形とばかり決め込んでいたところで、この言動は不意打ちだ。それも、あまり愉快ではない種類だった。無視を決めこむ。
「どうして裸になっているの、どうしてわたしも裸なの、ねぇ」
 全裸になってベッドにあがり、少女の上にまたがった。
「いやだ、なにをするの、あっちいって」
 腿を開くと膝から足首まで開く。ベッドの上でハの字に開いた両足、なんだか間抜けだ。 
「やめて、やめて、ちんちん入れないで」
 クレバス状のおまんこをちんこで押し広げてみると、内部は体色と同じ肌色だった。どうやら、ここまで気がまわらなかったらしい、いかにもな人工物だった。
「いたい、いたいよぉ、おかあさんたすけて」
 悲痛に叫んではいても、泣いてはいない。涙は最低限の中に含まれていないらしい。おまんこの方はマットレスの心配をしてしまうくらいに汁だくで、互いに陰毛からヘソまでぐっしょりと濡れぼそる。
「きついよぉ、抜いてよぉ」
 すべりが良すぎて油断していると本当に抜けてしまいそうだ。しばらくすると素材が劣化をきたしているのか、ふにゃふにゃとつかみ所がなくなってきた。きついどころか泥にでも突っ込んでいるような心地がした。
「やだ、中に出てる、何か熱いのが出てる、赤ちゃんできちゃうよぉ」
 あんまり緩いので尻に腕を突っ込み、腸壁越しにちんこを握って射精した。思っていたよりも多量に射精している。緩い刺激で長い時間擦っていたせいだろう。時計を見ると30分も経っていた。腕とペニスを抜いた穴はだらしなく開いたまま、粘液を垂れ流しにしていた。今更のような気がしたけど、ベッドを汚さないよう丸めたティッシュをつめて栓をした。
「せーしあふれてるよぉ、恥ずかしいよぉ」
 あと30分何をしたらいいんだろう。ベッドの縁に座って喫煙をした。なんとなく煙草を少女にあてがう。すると、素材は赤熱に触れるまでもなく、あぶられただけで溶けてしまう。溶けた素材は股からこぼれる粘液と変わらず、透明で糸をひいた。
「敏感になってる、触られるとまたいっちゃうよぉ」
 手足が胴体に引きずり込まれるように短くなっていく。そろそろ時間がきたのだろう。ベッドからバスタブに移す。表皮がすっかり溶けてしまい、多量の粘液と細長い金属の塊と水草じみた体毛だけが残った。
「みないでぇ、わたしのはずかしいとこみないでぇ」

 チャイムを鳴らして、男がやってきた。雫が落ちないように透明なビニールに包んで、ぼくは彼女を手渡した。
「ズコバコ一発具合はいかがでしたか、延長はよろしいですか」
「もう結構、泥人形にでも突っ込んでるみたいな気分だったよ」
 話をしながら、男はテキパキと少女の部品を解体し、折りたたみ、片付けていく。
「どちらかというと、観賞用ですから、あまりハードなご使用には耐えられないんですよ」
「見た目は悪くないよ、でも一時間で溶けるようじゃ延長したときどうするんだ」
「そりゃ、もう一度肉液を浴びせるんですよ」
「泊まりとかじゃあ効率悪いね」
「そういうときは、硬化時間を延長させる液体を混ぜるんです、最長12時間はもちますよ、使い心地は少々悪くなりますがね」
 玄関先はすっかり片付いて、男はスーツケースの金具をパチリと閉めた。
「では、ズゴバコのご入用がありましたら、またのご利用をお待ちしております」
「もうちょっとアソコの具合がマシになったらな、あと、シチュエーションのテープも」
「テープなんて入ってませんよ、ただの霊媒ですから」
「霊媒?」
 玄関のドアはバタンと閉められた。問い正そうとドアを開けると、丁度エレベーターのドアが開くところだった。男はすべるようにしてその中に消え、階下へ降っていく。
 化かされたような気分になりながら、バスタブについた粘液をシャワーで流す。タオルで腕を拭きながら、部屋に戻る。先の情事の熱気は消え、皺だらけの濡れたいシーツがうごめいている。真ん中から浮かび上がって、テント型の古典的な幽霊みたいにぼくに向かって囁く。
「おじちゃん、さむくてこごえそうだよ、ねぇ、抱きしめて、あったかくして」
 腕のなかでもがくシーツを抱えて、洗濯機に放り込む。蓋をした洗濯槽からくぐもった断末魔が聞こえる。それもジャバジャバと勢いよく流れ込む水音にかき消されてしまう。皺を伸ばして物干しに吊るすと、風にはためいて囁きもしなくなる。ただ、少女の輪郭がおねしょの跡のように残っていた。それも日向に干して乾かすと、一日た経たずに消えて失せた。
■夢のホルン
 わんにゃん走らせ踊るは豚の子ホルン。ホルスタイン並の巨乳複乳セックスシンボル、抱かれた者はみんなホルンの虜。抱かれなくてもその一瞥で、すっかり魂を抜かれたみたいに腑抜けてしまう。投げキスされたらどうしよう、ウィンクされたらどうなるだろう、電撃にでも打たれたみたいにその場に立ち尽くして、塩の柱になってしまっても不思議じゃなかった。
 そんなホルンも歳をとって魅力を失う。あんなに張り切っていた乳房も干し葡萄みたいにしわくちゃ、キレまくっていた腰の動きも今ではハエの足場にうってつけ。だれもホルンを振り返ることはしなくなった。誰もホルンを相手にしなくなった。ひとり寂しいホルンのしとね、はらはら涙を流しながら、黄色い濁った母乳が青洟みたいにシーツを汚した。
「誰も彼もわたしのことを忘れてしまったみたい」
 ホルンは鼻声で枕に顔を突っ伏して、うめくようにモゴモゴと語る。声は枕に詰まった垢と汗の塊みたいにな綿の中に吸い込まれて、ホルンと神様のほかには誰にも聞き取れなかった。
「昔はよかった、世界中の半分はわたしの物だった、ほしいものを見つけるのが難しいくらいだった、いつでもわたしがそう思う前には手に入ってた」
 今ではホルンの部屋に、昔日を思わせるものは何一つなかった。その魅力が翳った時分に、悪い男に捕まったのだ。精肉所の冷蔵庫みたいにホルンを逆さに吊り下げてサンドバッグにしたところで、もう何一つ、埃も出ないくらいにホルンの持ってる全てのものを吸い取られてしまったのだ。
「まるで絵空事、夢みたいに過ぎてしまったの、今ではもう本当のことだったなんて思えない、そう、全部夢、今だって悪い夢だわ、そうでも思わなきゃやってられない、何にも信じられない、でも、どうしたってこの悪夢から逃れられないのよ」
 枕から顔を離すと涙と唾液と鼻汁でぐっしょり糸を引く。昔はこんな不浄なものさえ男の引く手は数多だった。体毛ひとつをとっても秘蔵されるくらいのお宝だった。いまや、それらはそれら以上の価値を持たない、ただの汚物であり抜け毛に過ぎない。悪臭を放ち、櫛を通すとごっそりと抜け落ちる。
「そう、わたしは宝石箱だった、今では生ゴミの詰まったポリバケツ」
 じっとりと湿ったシーツの上でのたうつホルン。薄布団は冷気を通して、ホルンの痩せこけた肌をまさぐる。どんなに邪険にしてもしつこく迫る間男みたいに、ホルンの体にまとわりついた。
「とても信じられない、本当のことだとは思えない、わたしが今こうしているのが夢みたい、夢なら覚めてくれればいいのだけれど」
 眠られぬ夜が明けると、ホルンは昼近くに目を覚ました。ささやかな期待をこめて浴室の鏡を覗いてみると、しなびた年寄りの雌豚の姿があった。ゴミ溜めのような安アパートの一室も変わってはいなかった。日差しは容赦なくホルンの置かれた現実を照らし出して見せた。ホルンは蹄で顔を引きむしった。弛んだ皮膚はビニールのように裂けて、抜き身の肌からリンパ液交じりのまだらな血液が染みでる。憎悪をこめた前肢は勢いづいて、スコップで土塊を彫るようにして、ホルンの顔面を削いでいく。みるみる骨が露になる、目蓋のないむき出しの眼球が血と脂肪と細切れの中から鏡を覗きこんでいる。そして臼歯を噛み締め頬の腱を痙攣させて、嘲笑うのだ。
「そう、これがわたしよ、わたしなのよ、真実なのは今も昔もこれからも、一皮剥かれたこのわたしは変わらないってことなのよ!」
 血染めのホルンは真っ赤な足跡をつけながら、外に繰り出す。ホルンを一目みるや、みんな青ざめ悲鳴をあげる。気の弱い者はあぶくを吐いて、その場で卒倒しさえした。誰もホルンを無視できなかった。誰もが立ち止まり、ホルンから目を離せなかった。ホルンは上機嫌に、ガチガチと歯を鳴らしてステップを踏む。
「やっと気づいた、みんなわたしに気づいてくれた、これがホルンよ! わたしがホルンよ! あなたたちがホルンをどんな羽目にあわせたか、とくとご覧になってあそばせ!」
 ホルンは奇声をあげながら街の通りを駆け抜けた。アスファルトに蹄を打ち付け、くるくるとピルエットさえ演じて見せて、顔からほとばしる血液を観衆に浴びせかけさえした。
「ははっ、ははっ、ホルンさまの聖水だよ、一滴だって家宝ものだよ、ありがたいねぇ、ありがたいねぇ」
 ホルンは失禁し、糞さえ露な尻からひり出した。流麗なピルエットはそれでも揺らがず、辺りに汚物を撒き散らす。我にかえった者はあわててホルンから逃げ出した。ついにはホルンは車道に飛び出し、行き交う車の合間を縫って、車線の間の分離帯に飛び乗り、傲然と胸をそらして観衆を見下す。通報があったのか警邏の途中か、犬の警官の姿が人ごみを掻き分けて現れる。ホルンに向かって何かを叫んでいるが、朝のラッシュとホルンの登場で騒然としたこの場では、よく通る割鐘のようなホルンの声の他、誰の声も渾然として聞き取ることができない。
「こうでもしないとこのホルン様だとわからないなんて、まったくグズ共だね!」
 ホルンはコンクリートの高台から、そう言い放つ。排気ガスの中で蜃気楼のように浮かぶそのシルエットは、破滅を告げる預言者のように不吉なものに思われた。この場にはホルンの言葉しか存在しないかのようだった。誰も目を背けることはできず、車は停まり、渋滞の中でのクラクションがまるでホルンの調子に合わせるように鳴り響く。
「そうだよ、やっとアンタらは忘れちまったかもしれないけど、わたしはアンタらを忘れちゃいなかったよ、わたし以外の畜生共!
 よくも皮一枚でわたしを神様みたいに持ち上げてくれたもんね、よくもこの皮一枚でわたしを病気もちの野良犬みたいに」
 ぶっぶーぶぶーぶっぶぶー、唱和するクラクション。ホルンは大きく息を吸い込み、体にたかる蝿共をバチバチとその身をを打って払う。
「わたしは忘れないよ、蛆虫共! あんたらは糞にたかる蝿の幼虫さ、こんな糞袋に盛かる盲の白痴さ! あんたらの親分の糞蝿共はビルをおっ立て落書きを貼り散らす広告屋共さ! ああいやだ、この世はおぞましい肥溜めだってのに、あんたらは若い女やガラクタやなんかを美しいだなんて分厚い面の皮で言い放つんだからね、お笑いだよ、そう、喜劇だわよ、わたしもあんたらも神様が脂ぎったスナックと甘ったるいジュースの合間に笑い転げる喜劇役者なんだからね、何を深刻ぶってんだろう、馬鹿らしい、馬鹿でもなきゃあ正気でやってられやしない」
 ホルンは分離帯の上で哄笑する、その足元には顔や股から足を伝って汚物が溜まる。笑いすぎて仰け反るホルンは、自らつくったぬかるみに足を滑らせ転んだ。後肢は観衆に突き出され、股座を露に環視に晒し、頭は分離帯の縁に強く打ち付けられる。そのまま踵を停車していた車のボンネットに叩きつけ、コンクリートの壁と車体の隙間にくの字になって埋もれていく。体中のベタベタヌルヌルとした粘液が潤滑油になって、ついには狭い隙間の底に尻をつく。体は完全に畳み込まれてしまっていた。ピクピクと痙攣する手足と薄い頭皮だけが、ボンネットの上で活花のように観衆の目に晒され続けた。ぶっぶっぶぶー。クラクションはファンファーレのように鳴り響く。


 顔にぐるぐる巻きの包帯をして、ホルンはスーパーのレジに立っていた。それがホルンの仕事だ、バーコードをスキャナに通して、テキパキと数字のキーを打つ。レジの前には今日の新聞がくるんと丸めて収まっている。手に取る客は新聞の一面とレジ打ちを見比べ、笑顔を浮かべる。ホルンはそれに応えて、包帯越しに照れ笑いを返した。
 昼休み、公園のベンチで食事をした。手作りのサンドイッチに、コーヒー入りの魔法瓶、痛み止めの麻薬の錠剤。食後、前歯で白い錠剤を砕いて、コーヒーで流す。胃のあたりからゆっくりと暖かい波が体の四方に伝わり、ゆったりとした陶酔感と浮遊感に襲われた。目蓋がさがって、口元が緩んでヨダレが垂れる。黄色い日差しにぼやけた視界、間近で眺める油絵みたいに、景色が滲んだ。
 声が聞こえる。
「またやらかしたんだって、ホルン」
 同僚の男性店員の声だ。
「そりゃあ誰だってあんたの不幸は知ってるさ、それにあんたが美しかったことだって」
 ホルンはいい気持ちで男の声を聞いていた。牛のゴスン、真っ黒で真っ白な部分があって・・・・・・、角は根元まで削られている。首筋にはハートマークの焼印、耳の縁には千切れたピアスの跡。前科者の老いた雄牛。
「ムショではアンタの写真が聖書よりも心の支えになったもんさ、ヌードポスターの争奪で殺しがあったくらいだ、あんたが出る映画を見た夜なんかは眠られやしなかった、他の房のやつも呻いていたり、すすり泣いていたり・・・・・・、たまらなかったな」
 ゴスンはホルンの隣に腰を下ろすと、懐から色あせた写真を取り出して見せた。そこにはかつての飽満で張り切ったホルンの姿があった。ホルンの潤んだ瞳は写真を眺めていた。目蓋があれば目を細めでもしたかもしれない。
「美しいわ」
「ああ、天上の美だ」
「美しかった頃は、幸福だったわ」
「あんたが美しかった頃は、俺はあんたにしか幸福を見つけられなかったよ」
「そう、お互い幸せでよかったわね」
「今はこの写真にも、あんたのその姿にも、幸福なんて感じないよ」
「それじゃあ、今は不幸なの?」
「いいや、今はずっと幸せだ」
 ゴスンはホルンの膝に、写真を乗せた。ホルンは塵でも払うように、写真を膝から退かした。写真は宙を滑って、落ち葉の塊に混ざった。
「過去の幸福を反芻するのは飽き飽きよ」
「おれには不幸だった過去の唯一の光だった、思い出だよ」
「そして今の幸せを噛み締めるのね、うらやましいわ」
「おれはどん底だったときに、あんたに救われたんだ、今のあんたを見ていると、その・・・・・・」
「ごめんなさいね、わたしはそれでも、夢をみている方が好きなのよ」
「いや、気にしないでくれ、だけど、友達くらいにはなれるよな?」
「ええ、もちろん・・・・・・、ありがとう」
 大柄なゴスンが立ち上がると、ベンチもついでに浮き上がりそうだった。痩せた豚のホルンは、思わずベンチの腰掛を両手で掴む。ゴスンはスーパーに向かって歩いていく。その背中が見えなくなる、ホルンは泣きはじめた。膝に顔を押し付けようとしたけど、胴体にぐるりと巻かれたギブスで腰を折り曲げることもできない。女の子みたいに、手を顔に押し当て声を押し殺して泣いた。体の中から熱がなくなり、胸はぽっかりと穴が開いたようで、目の前は真っ黒だった。ただ、目と蹄ばかりが涙で熱い。不意に、その肩に腕がまわされる。
「ああ、ゴスン・・・・・・」


 最後に意識を取り戻したのは手術台の上でのことで、汚れたガーゼと銀色の術具と白衣の医者や看護婦に囲まれていた。仰向けのホルンの正面には沢山の電球と反射鏡の塊のような無影灯があった。皮膚のないホルンの顔が万華鏡のようにいくつもいくつも、その中に映っていた。磨き上げられた鏡に映った剥き出しの筋肉と骨格と眼球のプリズム、それは空に撒き散らされた宝石の輝きのように見えた。
『そうよ、美しいのよ、世界はこんなにも・・・・・・』
 猿の医師は鼠の看護婦からメスの柄を手のひらに受け取り、器用にコルクでも抜くみたいに、スポンと眼球を抜き取った。空ろな眼窩の間をコツコツとメスの先端で叩き、糸ノコを用意すると、頭蓋を切開しはじめた。白いお椀の下から灰色の脳が現れ、電極を差し込む。
「すごいな、こんな美しい風景は見たことがない」
 猿は心からの感嘆をこめてため息を混じりの声をあげた。手術室の一同は、巨大なディスプレイに投影された患者の今際の夢を呆けたように眺めていた。
■ガンダムさん
 元気にお外で遊んでいると、ガンダムがやってきました。
「やあ、あんまり日に当たっていないで、おうちでアニメをみるんだよ」
 そういいのこして、ガンダムはずしんずしんと地響きをたてて去っていきました。
「おにいちゃん、おにいちゃん、いまそこにガンダムがきてたよ」
 ぼくはおうちでアニメをみているおにいちゃんに、そういいました。
「ふうん、なにガンダムだい」
 おにいちゃんはうすぐらい部屋でピカピカひかるテレビの画面をみながら、ぼくにいいました。
「ぼくにはガンダムはむずかしくて、よくわかんないよ」
 ぼくはお外で遊ぶことがすきなので、ガンダムのことはよくわかりません。
「おれならガンダムなんて一目でみわけがつくのに、おまえはものをしらないな」
 おにいちゃんの言いように、ぼくは腹がたちました。なんだい、このオタクやろうとばせいをあびせて、おうちから飛びだしました。
 ひとりぼっちで道をあるいていると、またしてもガンダムにはちあいました。ガンダムは大きくて、体長はビルほどにもおおきなものでした。
「やあ、まだ遊んでいるのかい、この時間はおうちでアニメをみてなきゃいけないよ」
 ガンダムはあたまのおおきなふたつの目玉と機関砲をぼくにむけて、そういいました。
「おにいちゃんと喧嘩しちゃったから、すごくかえりづらいんだ」
「わたしもいっしょにあやまってあげるから、はやく帰ってアニメをみるんだ」
 そういうわけで、ぼくはガンダムといっしょにおうちにかえります。
「すげぇ! RX-78、ガンダムだ!」
 おにいちゃんはぼくといっしょのガンダムをみて、すっかり感激していました。ぼくのいったこともすっかりわすれて、むちゅうになってガンダムガンダムさわいでいます。
「きみはいい年をしてアニメばかりみてちゃあいけないよ」
 ガンダムはおにいちゃんにそういうと、バーニアをふかしてお空にとんでいきました。
「やっぱすげぇや、ガンダムは」
 おにいちゃんはガンダムがすっかりみえなくなっても、ずっとお空をみあげていました。ぼくはテレビの前のソファーにすわって、アニメをみました。ピカピカひかるテレビの画面は、なるほど楽しいものでした。
 それから十日ほどたって、戦争がはじまりました。
 気温がいきなり十三度もあがったみたいに、よのなかはさわがしくなりました。
 お空をながめているとまっすぐに光がとんでいき、きゅんと空気が悲鳴をあげます。そうして、どこかでなにかが爆発するのです。
 まるでアニメをみているみたいでした。とおくで大きなひとかげが土煙にまかれてうごいているのが、うっすらと見えました。きっとガンダムがたたかっているのです。
「みとけよ、おにいちゃんはガンダム乗りになってかえってくるからな」
 おにいちゃんはふかみどりの服をきて兵隊にとられていきました。おとうさんとおかあさんはめそめそと泣いていました。ぼくだけが元気みたいで、なんだかわるいような気がしました。
 戦争がはじまってから、ガンダムとお話することはありませんでした。ガンダムは兵器なのです、兵器は戦争がおしごとなのです。きっといそがしくしているのだとおもいました。
 そかい先でおにいちゃんから手紙をもらいました。おにいちゃんは写真のなかで、ガンダムのあしもとで笑顔をうかべてピースをしています。
『まだガンダムにはのれないけど、戦争はとてもたのしいものです
 おまえももっと大きければいっしょに戦争にいけたのに、残念です
 きっと、おまえが大きくなったころには戦争はおわっています
 お国の軍隊はとてもつよくて、戦争はあと半年もしないうちにおわってしまうでしょう
 うらやましがられても、おにいちゃんにはどうしようもありません』
 おにいちゃんからの手紙にはそうありましたが、戦争はそれから三年もつづきました。街はすっかりかわってしまい、そかい先からかえったときには見しった風景よりも、やけ野原やクレーターのような爆心地のほうがおおいくらいでした。
 おにいちゃんはかえってきませんでした。ガンダムにのれたのかどうかも、わからずじまいでした。とおくの島で戦死をしたそうで、お骨も遺品もありませんでした。
 占領軍のひとたちは装甲車や戦車で道路をはしっていきます。そのなかにはみあげるようなロボットはいなくて、ぼくはしんそこがっかりしました。
 高台にあるひろい公園に、ガンダムの首級がさらしものになりました。外国のことばでたくさん落書きがしてありました。こどもたちがおもしろはんぶんに石をなげたりしました。こわれたレンズの瞳には、埃や雨水がたまって、雑草がはえていました。
「ねぇ、ガンダムさん
 おにいちゃんはあなたにのれたの?
 あなたもとおい島でおにいちゃんといっしょにやられちゃったの?
 敵のひとたちはおおきなロボットなんてもってないみたい
 それなのに、どうしてぼくらの国は戦争に負けてしまったんだろう」
 はなしかけてみても、こたえはかえってきませんでした。
 ガンダムはあんなに親切にしてくれたのに、首だけだなんてとてもかわいそうにおもえました。きっと、ガンダムは小さいものみんなにやさしいのでしょう。ガンダムにとっては、ぼくも戦車もかわりない、小さな子供にみえたのかもしれません。だからガンダムはやられてしまったのだとおもいます。
 ぼくはえいくそっ、とくやしくなって、石をなげてる子供たちにげんこつをくわせてやりました。もっと戦争がつづいていたらとおもいます。あるいは、ぼくがガンダムに乗れるくらいにおおきくなってから戦争をやっていたらとおもいます。ぼくなら小さいこどもにだってようしゃはしません。そしたらきっと、ガンダムで敵国の大地をあしにふみしめ、この街みたいにしてやれたことでしょう。つぎの戦争までには、ガンダムがいったようにたくさんアニメをみながらりっぱな大人になることを決心しました。
■うまなみ
 馬が馬並ちんぽをおっ立て走っている。警棒をふりあげた警官たちがそれを追っている。きっとあの馬は猥褻物をみんなの目に見せびらかしているんだろう。気持ちはわかる。ぼくだってあんなに立派なちんぽをもっていたなら、間違えなく見せびらかしていただろう。そして、警官連中に追われるのだ。馬ほど早くは走れないから、きっとすぐに捕まってしまう。それでもぼくはやり遂げた男の顔をして、堂々と背筋をのばして捕縛されることだろう。疑いない。
 それにしても、あんなでっかいちんぽを受け入れるメス馬というやつはとてつもなく深いまんこをもっているのだろうなと考えているところに、魅力的な尻をしたメス馬があらわれた。そして尻尾をふりふり、ちらちらとぼくにおまんこを見せつけている、誘っている。だけども、ぼくはとてもじゃないけど馬に及ぶちんぽの持ち主ではなかったのだ。馬のまんこは馬並のちんぽを受け入れるためにあるのだ。きっとぼくでは満足できないことだろう。サイズの相違は不幸の元だと、カーマスートラも謳っている。せっかくのお誘いだけども、ぼくはメス馬の前をとおりすぎることにした。
 しかし、発情したメス馬はぼくの無視などまるで取り合わなかった。首筋を掴まれた猫みたいに、ぼくは襟首を咥えられて茂みにさらわれてしまった。ぽいと放られると、いきなり股間を舐められた。前歯で器用にジッパーを下ろし、下着をかき分ける。ぼく自身もメス馬に欲情していたので、ちんぽは既におっ立っていた。ばふんばふんと荒い鼻息がちんぽをくすぐり、思わずちんぽもぴくぴく脈打つ。そんなちんぽに長い舌が巻きついて、糸ひくかたい唾液でむしゃぶるものだから、すぐに達してしまった。長い鼻面の中にすっかり埋没してしまったちんぽは、怒濤のごとく射精した。食性にあわないものを摂って具合を悪くしないかしら、そんな心配をしてしまうほど長く勢いのよい射精ぶりだった。
 とろけそうな顔をして、馬はぼくの精液を飲み干した。よく動く唇がてらてらと輝き、ひどくそそられる。も一度お願いしたいくらいだったが、どうやら今度はぼくが奉仕する番のようだ。メス馬は尻を向けると、ぴょこんと尻尾をあげておまんこをのぞかせる。艶やかな毛並みと張り切った筋肉質の股の中心に奇妙に色づく一輪の花。紫色の粘膜はものほしそうにふるえて、唾液と同じく糸轢く粘液をだらしなくこぼしている。顔を近づけるとむわっと獣臭くて、あっという間に吐く息さえ馬の臭いが染みついたようだった。濃厚な臭いに喘ぎながら、ぼくは花弁の中心を吸った。メス馬の蹄が地面をひっかき、馬首は反る。あきらかな興奮状態に、蹴っ飛ばされやしないかとはらはらしながら唇と舌とで奉仕を続けた。
 満足したのか、馬はしなだれかかるような仕草でぼくの前に膝を折った。あまりの粘液の多量さに、ぼくは腹がもたれていた。一度射精したちんぽは、今ではすっかり反り返っている。馬並には遠く及ばないものの、これが今のぼくのベストではあった。互いに立ったままだと踏み台でもなければ届かなかった性器の位置も、ぼくが膝を立てさえすれば具合がいい。湯気をたてて緩んだメス馬のおまんこにちんぽを突き立て、差しこんだ。
 馬並を受け入れる器だ、緩いものだと決めつけていたが、とんどもない思い違いだった。はじめこそスムーズにちんぽを受け入れたおまんこが、ちんぽをすっかり根本まで押しこんだところで豹変した。食いちぎられそうに締まるのだ。走るために発達した馬の臀部からのなせる締めつけである。サイズはともかく硬度に関しては多少の自負があったものの、この膣圧の前にはゴム風船のように頼りない。粉々に砕かれてしまいそうだ。ぼくはちんぽをとらえられたまま、身動きができない。そのくせ、メス馬は座ったまま膣内の硬軟を自在に操作しているのだ。まるで負圧式の搾乳機みたいに、ぼくのちんぽから精液がしぼりとられる。しぼりとられようとしていた。そこですかさず、きゅっと根本を締め付ける。行き場をなくした精液が膀胱に流れこみ、ちんぽは狂おしく身をうねらせて空うちをする。そんなことが何度も繰り返されるのだ。
 ぼくがやっと解放された頃には、すっかりあたりは暗くなっていた。メス馬の姿はなく、自身の身体にとりついた獣の臭いだけが事後のしるしとして残っていた。陰毛は整髪料をつけたみたいに束になって固まっていた。冬でもないのにちんちんは蕾みたいに縮こまっている。身体を起こすと立ちくらみがして、腰が妙に重たい。精も根も尽き果てていた。ロボットみたいにぎくしゃくと歩き出す。
 茂みをかき分けてもといた道に戻ろうとしていると、一人の女の子に鉢合わせした。ふと、慣れた筈の獣臭が鼻についた。女の子もはじめはばつの悪そうな顔をしたが、不意になにかに気づいたみたいに、微笑みを浮かべた。ぼくも彼女の面変りに、ぼくらがここで出会った経緯を察することができた。共犯者がするように笑みを交わして、そこで別れる。ぼくよりずっと歩きづらそうな、そんな背中を見送りながら、カーマスートラもアテにはならないと考えていた。きっとぼくらは馬となんかよりずっとサイズが近いのだろうけど、それでも互いに馬を選ぶことだろう。しかし、馬の方は次の機会を与えてくれるのだろうか。
■瓶の中の人魚姫
 少年は向こうの浜辺で、キラキラとなにかが光っているのを見つけました。近づいてよく見てみると、それは海水と砂とで洗われた、ツルツルと滑らかなガラス瓶でした。
 瓶は太陽の光を反射して、正視するのが眩しいくらいに光っていました。少年が手にとって持ち上げると、瓶の口からはグッピーやベタを思わせるひらひらとした赤い尾びれが垂れ下がりました。瓶の中には、赤い生き物が詰まっていたのです。それはちょうど、苺ジャムの瓶詰めのようでした。
 厚地のガラス越しに見える中身は奇妙に歪んで、赤ん坊か両生類のようなぷよぷよとしたやわらかそうな身体に、小さな子供の頭が生えているように見えました。瓶の中の奇妙な生き物も少年の姿に気がついたようで、なにかをうったえるように尾びれをピチピチとさせるのでした。
「ぼくの名前はシュウスケ、おまえの名前は?」
 シュウスケと名乗った少年は瓶を額にもちあげて、瓶の中身にひとり言のように問いかけました。
「わたしはポニョ」
 ポニョと名乗る生き物の声は、瓶越しにも奇妙に明瞭でした。
「わたしはポニョ、わたしはポニョ、わたしはポニョ、わたしは・・・・・・」
 ポニョは自らの名前を呼べることがとても嬉しいことのように、何度も繰り返すのでした。
「ヒトの言葉をしゃべるなんて、妙なやつだな」
 答えがかえってきたことは、たずねた当人である少年にも意外なことでした。
 そうは言っても宗介はまだまだ幼くて、頭がやわらかにできているのです。手のひらほどの生き物が喋ってみても、悲鳴をあげて瓶を投げ捨てるでもなく、すぐに大人のもとに駆け出すでもありません。にんまりと顔一面の笑みを浮かべて、瓶の中身へと好奇心をあらわにするのです。
「妙なやつだな、おもしろいぞ、そら、出てこい、出てこい」
 宗介は瓶をひっくり返して、口を砂浜に向けて振りました。
「あわわ、あわわ、ポニョ、めがまわる」
 ポニョはぴっちりと瓶にはまりこんでいるようで、どんなに振りまわしてもスポンと抜けてはくれそうにはありません。
 どうやら、瓶を壊すか中身を潰すかしないと取り出せないみたいです。


 どちらにしようか迷いながら、宗介は何となく瓶の口からはみ出した、ポニョの身体をいじくりました。尾びれに見えていたものをかき分けてみると、小さなへこみのようなものが見えました。へこみをおしひろげてみると、どうやらそれは浅いへこみではなく、小さな穴のようでした。
「これはお尻の穴なのかな」
 宗介が無邪気に穴を突つきました。
 無闇に小動物のお尻の穴をいじりたくなるのは、あらゆる少年が持つ本能のようなものでした。宗介はプニプニとやわらかな穴のの入り口を、執拗にいじりまわすのです。
「いやん、そこはポニョのおんなの子、ポニョ、ポニョ、おんなの子」
 ポニョの声はくるしそうなものでした。
 宗介はまったく気にもしないで、指を動かしています。そのうち、指が糸が引きはじめました。穴の奥からトロトロとした粘液がこぼれだしたのです。指先についた粘液をこすってみると、ぬるぬるとよく滑りました。何かを受け入れるための潤滑液であると、宗介は感づきました。
「どうやらこいつは、いやらしい魚の子らしいな」
「ポニョ、ポニョ、さかなの子、だけどいやらしくなんてないもの」
「それじゃあどうして、こんなにお尻をベチャベチャにしているのさ」
「わかんない、おしりをいじられたらあたまがぼーっとなって、いじられてるところがジンジンしてきたの」
「そういうのっていやらしいんだぜ」
「ポニョ、いやらしい子なの?」
「だって、こんなにぬるぬるとしたおしるを出しているのは、ここに何かを突っ込まれたがってるに決まってるんだ」
「それはいやらしいことなの?」
「そうだよ、これはいやらしいことをしたり、いやらしいことを考えると出てくるおしるなんだ」
 宗介は半ズボンの前を開くと、少年のもちものにしてはなかなかたくましいいちもつを取り出しました。宗介のいちもつはすっかりいじりぐせのついて、感じやすくなっていました。そんないちもつの先はポニョのお尻と同じように、トロトロとした粘液で濡れていました。
「ほら、ぼくのここもこんなにいやらしくぬれているんだ」
「そこはなあに、ちいさなおしり?」
「これはぼくの男の子、おちんちんなのさ」
「おちんちんはきゅうくつなふくろのなかでとてもくるしそう、ここからでられないポニョみたい」
「おちんちんはいつもはこうじゃないんだ、いじっているとすっかり中身が飛び出して、小さくちぢこまってしまうんだ」
「ポニョのからだもおちんちんみたいに、いじっているとちぢむのかしら」
「わからないな、だけどもいやらしくなったおちんちんをいじっているととても気持ちがいいんだ」
 宗介はいちもつを握ると、上下にゆさぶりはじめました。粘液がさきっぽからぬるぬると手のひらにつたわり、その動作が滑らかになっていきます。
「ポニョ、ポニョ、ポニョのおしりもいじって!」
 ポニョは瓶の中からくねくねと切なげにお尻をうごかしました。
 宗介のおちんちんを眺めていると、身体の芯からぼうっと熱く火照ってくるのをポニョは感じていました。宗介の指がポニョのお尻に触れると、ビクンと身体が瓶の中で跳ねました。ポニョの女の子から背筋を通って頭の中へと、電流が走ったみたいでした。
「もっとして、もっとして、もっとつよくして!」
 気がつくと、ポニョは叫んでいました。


「ああ、もう、めんどくさいな・・・・・・」
 自らのいちもつとポニョの女の子を同時に相手にするのは、なかなか骨の折れる作業でした。
 そこで、宗介はいちもつの先っぽでポニョの女の子を擦ることにしました。
「おたがいに擦りあえばきっとラクチンだろうな」
 ぬるぬるとした手のひらをズボンで拭うと、宗介は瓶を両手で持ち上げます。
「はやくこすって、ポニョのおんなの子がジンジンしてせつないの」
 宗介はそれが何を意味しているのかも知らず、ポニョのお尻へいちもつをあてがいました。ポニョのお尻は歓喜するようにぷるぷると震えて、宗介のいちもつもそれに応えてビクンビクンと震えました。宗介はそのまま、瓶をしっかりと握りしめて、いちもつの上で滑らせました。
「うわ、これ、すごくいい、ぬるぬるして吸い付くみたいで、手でするよりずっときもちいいよ」
「ポニョ、ポニョ、こすれてる、ポニョのおんなの子がおとこの子のおちんちんできもちいいよう」
 宗介はいままでにない感覚に、あっという間に上り詰めてくるのを感じました。瓶を動かす手つきが乱暴に、凶暴にさえなっていきます。瓶からちょこんと飛び出したポニョのお尻の表面でいちもちつを擦っていたのが、今度はポニョの小さなお尻に突き立てるようにぐいぐいと押しつけるのでした。
「くるしいよ、つぶれちゃうよ、ビンのなかはポニョでいっぱいだよ、おちんちんはいんないよ」
 ポニョはそれまでの恍惚の様子からうってかわって、いちもつに追い詰められて苦しそうでした。
 そのやわからかな頭は瓶の底に押しつけられて、真っ平らになってしまいます。
「この穴にもうすこしで入れそうなんだ、おちんちんの先っぽがポニョの女の子にはまってるよ、きっとこの中に全部つっこめたら今よりもすごく気持ちよくなれるんだ、ポニョだってきっとすごく気持ちよくなれるよ」
「やだ、やだ、ポニョくるしいよ、つぶれちゃう、こわれちゃう、おちんちんおっきすぎるよう」
「もうちょっとだよ、ポニョ、ポニョ、ポニョ、入っちゃうよ!」
 宗介はいちもつの先っぽで、プチンと何かが弾けるのを感じました。すると、途端にいちもつが根本まで瓶の中に吸い込まれていきました。瓶の中は感触はねっとりとした肉厚なゼリーのようでした。それがいちもつ全体を包んで、ふるふると震えるのです。
 宗介は快感に頭が真っ白になりました。無我夢中で、腰をへこへこと動かします。ほどなくして、いちもつの根本から水鉄砲のような勢いで精液がこみあげて、先っぽから瓶の底へとびゅるびゅると注がれていきました。
「ふー、信じられないくらい気持ちよかった、ポニョ、おまえも良かっただろ?」
 いちもつをひきぬくと、瓶の中にはポニョの姿はありませんでした。代わりに、ドロッとしたピンク色の液体と、色とりどりの紐のようなものや、それに絡まるように何だかよくわからない小さな塊が浮いていました。瓶の底は絞りたての精液がだまになってよどんでいます。
「あいつ、こんなんなっちゃったのか」
 宗助は瓶の中身を指でかき混ぜてみます。コロコロと硬いものが指に触れました。ぬるぬると滑りやすいその塊を苦労して取り出してみると、ビン越しに宗助を見上げていたポニョの目の玉でした。宗介にはそれが何なのか、さっぱりわかりません。しばらく手のひらで弄ぶと、ぽいと波打ちぎわに捨ててしまいました。
「ま、いっか、この瓶はすごく気持ち良かった、またこんど使ってみよう」
 こうして、宗介は瓶を持って帰ることにしました。そうしてしばらく、暇さえあればいちもつを突き刺して、へこへこと腰をふる日々が続きました。ですが、一番最初にねじ込んだ時のような感触は使うごとに薄れていくようでした。瓶の中の固体とも液体ともつかないドロドロは宗介の精液を注がれるごとに、希薄になっていくのです。そのうちに宗介は瓶のことを忘れてしまいました。手でするほうがよっぽど具合がよかったのです。


 しばらく経った、ある日のこと。
 宗介は自室の押入れに体を突っ込み、もがいていました。浜辺で拾ったパリパリのエロ本を隠していたのです。雑多なガラクタが押し込められたそのわずかな隙間に、エロ本をねじ込んでいました。そうしているうちに、ふと、同じ場所に隠されていた黒いビニールの包みが目に入りました。ビニールがその中に隠していたのは、ポニョの体液を満たした瓶でした。
 薄暗い押入れの中から日の当たる部屋の窓辺に包みを取り出しました。分別があれば、中身を確かめることなく捨ててしまったことでしょう。夏のさかり、心なしか膨らんだビニール袋の内容物は今にも腐臭を漏らしそうです。もっとも、分別がある人間が生ゴミ同然の代物を自室に放置しておくことは考えられません。
 ビニールの口を開くと、瓶の中身が一変していることに宗介は気がつきました。ヘドロのようだった内容物はどういうわけかドブ水程度に浄化されていました。そうして、汚水の中に何か動くものがありました。ねとねととした手垢で曇ったガラスと濁った水に透かしてに見えるのは、無数の赤いツブツブでした。それが瓶の中でところ狭しと、あきらかに蠢き、泳ぎ回っているのです。
 宗介はその中の一匹を指で摘むと、虫眼鏡で拡大して見ました。指の間でピチピチと尾びれを振っているのは、赤ん坊の頭を生やしたぷにょぷにょの稚魚でした。瓶の中身は、小さな小さな、小指の爪ほどの大きさをした無数のポニョの似姿でした。ピチピチと元気に泳ぎ回る子ポニョたちの姿を見て、宗介は思うところがありました。
「これだけいっぱいたら、最初みたいなのが何回でもできちゃうな」
 宗介は家中から空き瓶をかきあつめてくると、水を満たしました。そうして、瓶の中に一匹ずつ、子ポニョを放つのでした。広いところに放たれた米粒みたいな小さなポニョは、嬉しそうに上へ下へと泳ぎ回ります。
「ポニョみたいに、瓶一杯に育つんだよ」
 不揃いな形の瓶を並べて、その中で泳ぐ子ポニョを眺めながら、宗介はうっとりとささやきかけました。期待にむねといちもつを膨らませて、ついつい手が股間へと伸びてしまいます。
 ぽろん取り出したいちもつの先っぽから、ちょろりと何かが頭を覗かせていました。宗介はそんなことには気づかずに、いつものように手慰みをはじめます。そうして、ぴゅるるとティッシュの上に飛び出したのはまっかかの小さな小さなポニョの群れでした。

■冬ごもりの長い夢
 向こう岸には花畑、そこで踊るのは目がくらむほどに綺麗な少女、ぼくは川に飛び込んでクロール。そのうち疲れて不格好な平泳ぎに転向した。まるでカエルみたいだ、大きな太った蝦蟇ガエル。あそこで踊る少女に比べれば、ぼくなんて蝦蟇がいいとこだろう。まったく、同じ種族と思えないくらいに少女は美しくてその踊りは質量なんて感じさせないくらい軽やかでいて、天使と呼ぶには羽根と輪っかが足りないというだけの代物だった。羽根と輪っかが似合う人間というのはそうはいない。仮にぼくが二つをこの身に授かれば、グロテスクな戯画でしかないだろう。まったく、ぼくは少女に近づいて何をするつもりだろう。天使と蝦蟇とじゃ全くつりあわなというのに。
 身の丈にあったカエルの泳法で順調にぼくは岸辺にたどりつく。花畑の少女はそんなぼくに気付かず踊る。ぼくには少女の踊りを邪魔する勇気はなかった。ただうずくまって少女を眺めていた。ぼくがひと声でもあげた刹那、花畑の魔法は解けて、少女は跡形もなく消えてなくなり、ただひとり残されることが怖かったのだ。ぼくにはこれだけ近づいても、少女が実在していることが信じられなかったのだ。泳いでいる間、きっと蜃気楼みたいに進めば進んだだけ遠ざかっていくものだと確信していた。少女の姿が鮮明に近づいてくることにむしろ違和感を覚えたくらいだったのだ。その気になればぼくはクラウチングスタートで少女の元へ駆け寄ってその勢いのまま押し倒せるだなんて現実はとても信じることができなかった。きっとぼくは何にも触れることなく踏み潰した花に足をとられて倒れ伏して地べたとキスを交わすのがオチだろう。
 つまるところぼくが少女を押し倒してそのままキスをしたことについてはぼくの浅ましい妄想の咎は認めるものの全く意図していない事故に等しい出来事だった。ぼくは目前にした少女の実在を全然認めていなかったのだ。むしろ、ぼくのような男の前に前置きもなく出現した少女の方に過失があるのではないだろうか。そういう次第でこのまま少女が醜い蝦蟇男に蹂躙されるのは致し方のないことだった。カビ臭く苦い土の代わりに甘くてしょっぱい少女の口腔を味わう羽目にぼくは陥ったのだ。歯と歯の間でジャリジャリとする感触の代わりに舌と舌をからめあってその熱と柔らかな感触に恍惚となるのは全く意図していないことだったのだ。擦り傷をこしらえて血まみれになるかわりに少女とぼくの唾液で顎まで濡らして互いの境界線が曖昧になるくらいに長く痺れるキスをするという過失を少女は自らの不注意によって招いてしまったのだ。
 ぼくの水に浮きやすい脂肪だらけのでっぷりとした身体は筋張った少女をの身体を包み込むかのようだった。垂れ下がった贅肉に窒息しているみたいに胸の下で少女が激しく喘いでいる。ぼくの身体の無駄な脂肪は、きっと少女の体重の二倍も三倍もあるのだろう。肥大した臓器や粘膜をあわせれば、きっと少女の一人や二人つくろえるくらいの分量はあるのだろう。どうして、ぼくが過剰に摂取したカロリーは少女でなく脂肪として醜くぼくの身体につきまとうのだろう。今までそれが呪わしかった。だが、今はこの脂肪を介してぼくは少女を抱いているのだ。脂肪はあらゆる隙間を塞いで、隅々まで少女との密着を助けてくれていた。互いの熱量を交換して、今や少女はぼくの身体に取り込まれていた。ぼくの脂肪は少女を型取る。それを鋳型に少女を鋳造できないものだろうか。
 だけども、今は少女の原器がここにあるのだ。質が劣れば数で補うことも考えるだろうが、最高のものがひとつ手元にあればそれ以外の粗製品を誰が一体望むだろう。ただぼくはここにかき抱いた少女を夢中で貪る。
 組み伏せた少女はぼくの身体の下でさっきよりもずっと激しく踊っていた。ぼくはその踊りに拍子を打つみたいに腰に体重をかけて深くを探ると、少女の身体はびくんと跳ね上がり腰がひくひくと震える。ぼくは少女の震えを下腹で感じながら自らも歓喜に腰を震わせる。獣みたいにガツガツとは致さない。接合そのものが快楽であり、少女の身じろぎひとつに激しく刺激されている。射精することはむしろ、この悦びに冷や水をあびせかけるような忌むべき生理的終末の予兆だった。それでなくても、こうしているだけでぼくはダラダラと重い粘液が尿道から零れているのを感じているのだ。それは痙攣を伴わない吐精とでも言うべき精液の漏洩だった。少女の中で強烈な勃起の維持を止め、半ば萎れた陰茎はぐるぐると蠢動しながら吐精する。圧力を伴わずに排出されたゼラチン状の精液が少女の胎内をゆっくりと這いすすんで侵していく。それは粗末な陰茎が少女の身体の奥深くまでを満たせないのを助けようと、溶かした脂肪を少女の中へ注入しているみたいだ。こうして、少女の表皮ばかりでなくもっと奥深いところでもぼくは少女と密着するのだ。密着する面積が増えれば増えるほど、ぼくの悦びはいや増すのだ。いっそ腹をさばいて少女を詰め物にしてそのまま縫い込んでしまえたらいいのに。
 少女との接合は素晴らしくて、まるで醒めるくらいならいっそ世界の終わりを望むくらいの居心地の良い夢を見ているようだった。そんな夢にはいつだって妙な生々しさがつきまとうものだった。あまりにも生々しくて、かえって夢の中にいることを強く自覚してしまう。そんな夢の中にいるような気分だった。だが、夢にしても現にしても終わりは訪れる。タイトに陰茎を挟んでいた粘膜の壁がそれまでにない動きで射精を促してしまったのだ。それは恐らく少女の絶頂に伴う強烈な痙攣だったのだろう。ぼくは自らの快感には絶えず意識を集中していたものの、少女にこの無理矢理の接合で性感が伴うとは予想だにしていなかった。ただ醜悪な蝦蟇に組み伏せられ嫌悪と破瓜の痛みに耐え忍んでいるものとばかり思っていた。
 少女が快感を覚えていた事実は射精に伴い少女への執着が冷めると共に、急激な嫌悪となってぼくの胸を突いた。吸い付いていたような皮膚を剥がそうと身を起こすと、少女の身体も一緒にもちあがった。ぼくは少女の体温も体重も体臭も厭わしくて、身体を振ったり少女の頭を掴んで押し退けたり、とにかく身体から少女を引き離そうと藻掻いた。そうこうしているうちに陰茎は再び吐精をはじめ、少女の皮膚は吸い付くというより食らい付いてでもいるかのように接合部が痛みを伴いはじめる。そして、眩暈で視界が白くなる。立っていられず、少女を貼り付けたまま仰向けに倒れた。これではぼくが少女に組み伏せられているみたいだ。白一色だった視界がやっと色づきはじめ、少女の輪郭を映すと、そこにはもうさっきまでの少女はいなかった。そこには一匹の肥え太った蝦蟇がいた。ぼくは身体の上に腹ばいになった蝦蟇を押し退けようと、手を振り上げる。その振り上げた自らの腕を見て、愕然とする。その腕はぼくの腕には見えなかった。真っ白で細くて、染みひとつない美しい腕だった。こんな状況でなければ、見とれてしまうような細腕だった。それは、今までぼくが組み敷いていたものの持ち物だった。蝦蟇はみるみる膨らんでいく。そしてぼくの身体を覆い尽くそうとしている。ぶよぶよとした冷たい脂肪の腹。ギトギトとした汚らしい痘痕だらけの表皮。あまりの嫌らしさに嘔吐が出そうだ。垂れ下がった胸の肉に顔を覆われ、窒息しそうになる。肉に溺れて喘いでいると、股座の痛みと異物感に体中が引き攣る。ここから逃れようと暴れてみても、身体を覆う肉の壁は身じろぎもしなかった。それどころか、残酷にも身体の深くに押し入ろうとするのだ。生暖かな蛞蝓のようなものが胎内を這いだす。それがくすぐるように奥へ奥へと押し寄せてくる。痛みと嫌悪感とは別のところで、奇妙な感覚がパッとひらめく。喜悦だった。こぼれそうになる甘い吐息をかみ殺して、必死に蝦蟇の侵食に耐える。だが、身体の震えはどうしようもできなかった。蝦蟇との接合部がびくびくと震え、ひきつり、蠢動をはじめる。その動きが排出ではなく迎え入れようと蠢いていることに気付くと、ぼくは自らの肉体に絶望するのだった。それなら、いっそ、嫌悪するその肉体の持ち主であることを願った。ただひたすら汚されるためだけの天使じみた少女の身体など捨ててしまいたかった。


 長い夢から目を覚ますと、ぼくは土深くの穴蔵に眠る一匹の蝦蟇だった。体内時計が春はまだ遠いことを告げている。密室の暗闇に目蓋を閉じているのか開いているかもわからない。結局、ぼくは睡魔が促すがままに再び長い眠りについて長い夢を見続けるのだ。こんなに夢ばかり見ていて、ぼくは春と夢とを見分けることができるのかしら、闇から闇へと消えていく意識の中でそんなことをチラと思う。そして、どちらもどうせ変わりはないさと、一人納得して眠りにつくのだ。


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